アイザワさんとアイザワさん
「初花さんだって、彼氏じゃないって言ってたのにー。『樹さん』なんて呼んでなかったじゃないですかー!」
……それこそ、いつの話?ってくらい前じゃないの。
なかなか話を切り出せなくて、私もちょっとイライラしてきた。たぶん、私の方が樹さんよりもずっと短気だ。
「……うるさい。邪魔。あっち行って。」
そう思った瞬間に、思わず考えた言葉がそのまま口から零れだしてしまっていた。
私のストレートな一言に、その場の全員が固まった。
「お前……俺も人のことは言えないけど、今のはちょっと酷くないか?」
「初ちゃんは素直なとこがいいとこなんだけど……今のは、ないなぁ……」
まずい。言い過ぎた?と思って慌てて木村くんの方を見ると、私の言葉がかなりショックだったのか、
「もう『お前』なんて呼ぶ仲なんですね……」
と全く関係のない言葉をちょっと泣きそうな顔で樹さんに言っていた。
しかも『お前』なんて、付き合う前から言われてたし…
結構深刻な気持ちで話をしようとしていたのに、なんだか肩の力が抜けてしまった。
その時、カウンターの方から陽介さんが木村くんに向かって声をかけた。
「木村。お客様の会話を邪魔するんじゃないよ。戻ってこい。」
穏やかな口調だったけど、有無を言わせない迫力があった。