アイザワさんとアイザワさん

「茜さん。試験まであんまり時間がなくて大変だと思いますけど、わたしが出来ることなら何でもしますから、言ってくださいね。」


「ありがとう。…でも、正直この歳になっていろいろ新しいことを覚えるのは厳しいわ。6月の試験落ちても水元さんは初花ちゃんのこと待っててくれるの?」


「茜さんが受かってくれるのが大前提ですけど、前期で駄目なら、後期の10月までは…待っててくれるんじゃないですかね?元々無理やり入れてもらったようなもんですから。」


実は、私は水元医院のデイサービスに新しく勤めることが決まっているのだ。


介護の専門学校を卒業しないまま辞めた私は何も資格を持っていなくて、働きながら資格を取ろうか、学校に入り直そうか悩んでいた。


樹さんの家に行った時にたまたまその話を瞬先生の前でしたら、「じゃあ、うちで働きながら資格取ればいいでしょ?」とあっさり採用をしてくれたのだ。


こんな、『超』の付くコネ入社はまずいでしょ!


そう思って慌てる私に「元々初花ちゃんにはウチで働いてほしいなって親父とも話してたんだよ。ボランティアの時も、うちのスタッフの手が回らないとこをさっとフォローしてたし。気が利くし、話上手だから、逃したく無くてねぇ。就職するときにうちにおいで、って言うつもりだったんだ。」


だから、気にすることないよと言ってくれた。
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