【短編】好き、です。
「今謝れば、許してあげる。
それから、もう二度と先輩に近づかないって誓えよ」
私はそれを聞いても謝る気はない。
先輩に近寄らないって誓う気もない。
ただ私は黙り込んだ。
「…あぁ、そう。じゃあしょうがない」
呟きが聞こえた次の瞬間、
ザキュッ!
その音と共に、視界の端に黒いものが写った。
えっ…?
今まで騒ついていた教室が、一瞬で静まり返ったのが分かった。
その耳障りな音は尚も続き、音がしなくなった時には床が黒に染まっていた。
それが私の髪だと気がつくのには時間がかかった。
「あはっ!前よりはマシになったんじゃない?」
私を押さえつけていた奴らは既に退いて稲沢と共に笑みをたたえていた。
しかし、私は立ち上がる事なくただ呆然としていた。