【短編】好き、です。
そんなことには構わず、稲沢は憤慨した様子で言葉を続ける。
「どうせあんたは先輩のこと、好きでも何でもないんでしょ⁉︎」
…はっ?
はいはい、と思いながら聞いていたが、その言葉に同じ様に思うことは出来なかった。
お前に何がわかるんだよ。
私は、先輩のこと…
「っ…⁉︎」
私の心の声を遮るように、体を押さえつけられた。
そして次の瞬間、体中に鈍い痛みが走り、目の前には床があった。
そんな私の姿を見て稲沢の口から含み笑いが溢れた。
すっとしゃがむと、稲沢が私の髪を掴む。
髪を勢いよく引っ張られ、髪が抜けると言うよりは頭が抜けてしまいそうだ。
痛みに顔をしかめると、上から不快な声が降ってきた。
「ほら。謝りなさい」