【短編】好き、です。

そんなことには構わず、稲沢は憤慨した様子で言葉を続ける。



「どうせあんたは先輩のこと、好きでも何でもないんでしょ⁉︎」


…はっ?



はいはい、と思いながら聞いていたが、その言葉に同じ様に思うことは出来なかった。



お前に何がわかるんだよ。


私は、先輩のこと…





「っ…⁉︎」


私の心の声を遮るように、体を押さえつけられた。



そして次の瞬間、体中に鈍い痛みが走り、目の前には床があった。



そんな私の姿を見て稲沢の口から含み笑いが溢れた。



すっとしゃがむと、稲沢が私の髪を掴む。



髪を勢いよく引っ張られ、髪が抜けると言うよりは頭が抜けてしまいそうだ。



痛みに顔をしかめると、上から不快な声が降ってきた。




「ほら。謝りなさい」




< 16 / 30 >

この作品をシェア

pagetop