理屈抜きの恋
色々な人の意見を聞いてみるものだ。
そういう考えもあるのだと初めて知った。
今の細井さんの興味は運ばれてきたカルパッチョにあるけど、細井さんの話しを聞くべく、話しを戻す。

「細井さん、今誰かと付き合っているんだっけ?」

「私は今、フリーですよ。真美さんのパーティーで良い感じになった人がいたんですけど、好きな人がいるので。」

「それって社内の人?」

真美ちゃんが身を乗り出して細井さんに聞く。
それを見た細井さんはまるで重大発表をするかのように私と真美ちゃんを交互に見つめ、そしてニヤリと笑うと小さな声で「副社長です」と言った。

「そうなの?!」

突然の告白に驚いたのは私だけ。
どうして?と真美ちゃんに無言で問う。

「あれだけかっこよくて、仕事も出来る男、なかなかお目に掛れないじゃない。笑顔なんてすっごい素敵だよね、細井ちゃん。」

「そうなんですよ。挨拶した時のあの優しい微笑み。もう蕩けそうです。」

「微笑み?」

副社長の行動を全て把握しているわけではない。
でも細井さんが副社長に微笑んでもらえるような仲になっていたなんて知らなかった。
基本的に副社長は女性に対して無表情に近いのに。
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