理屈抜きの恋
同期の二人が撫子を守り、撫子の有能さや性格を理解している上役たちが気に掛けなければ、撫子は辞めてしまっていたかもしれないと鈴木部長は加えた。

「嫉妬ですか?」

「まあ、そうだよね。特にあの子は欠点になる要素が少ないだろう?」

「あのカビと昆虫食好き位なものでしょうか。」

「あぁ。あの昆虫系の食べ物はね、あの子が幼い頃、入院生活を送っていたときに入院しているお年寄りから頂いたものなんだよ。滋養に良いって言ってね。それから食べ続けているんだ。」

「カビは?」

「あ~。あのカビ、気持ち悪いよな。でも、あれも意味があるんだよ。」

「カビに意味?」

「カビって放置しておくとどんどん増えるだろう?入院してばかりで友達が出来なかったあの子の唯一の友達なんだってさ。友達がたくさん欲しかったんだって言っていたよ。」

幼い頃に体が弱かった、というのは聞いていたが、そんな理由があったなんて知らなかった。
聞けば親父的な趣味も入院患者から教わったのが発端だと言う。

「あの子の周りにいる奴らならそのことを知っているだろうな。それも欠点ではなく、美学に映るんだよ。」

「美学、ですか。」

「それに加えてあの容姿と有能さ。自信を無くす女の子は本当に多いよ。それが余計に苛立たせるんだよな。」
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