理屈抜きの恋

やっぱり泊めるべきだった。

実は、撫子母には『明日返してくれればイイですよ。ウフ。』と言われていた。
大事にしたかったから送り届けることを約束したのだけど、ハンドルを強く握り締める事で堪えなくてはならないほどに後悔するくらいならお言葉に甘えさせてもらえば良かったと後悔する。

でも今はとにかく最上の事が問題だ。

これもまた撫子には話せなかったが、部署異動の話は部長の方から出始めている。

撫子に振られて営業成績が落ちた外村という男と同じなのだ。

ただどうしてもあの話は腑に落ちない。
どんなに撫子が魅力的だからと言っても、振られただけでそこまでおかしくなるものだろうか。
俺が恋愛経験が少ないせいなのか?
それとも撫子の話が間違っているのか。

裏を取るべく、早々に撫子と仲の良い鈴木部長にそれとなく話しを聞いた。

「3年前の話なのですが…」

鈴木部長は撫子の事が大好きだ。
実の娘と思っているほどに。
そのおかげで話は多くを語らなくても簡単に伝わった。

「恋愛の揉め事なんてさ、あれだけ社員がいるんだからしょっちゅうあるんだよ。不倫なんて話もよく聞くしね。でも、ほら、神野くんはきれいだし仕事が出来るだろう?男やお偉いさんにも人気があるから、よく思わない奴らが噂をどんどん悪い方へと広めたんだよ。」
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