理屈抜きの恋
13
「あら?撫子ちゃんじゃない?いらっしゃい!」

一度しか会っていないのに、お店に入るなり私の名を呼んでくれたのは涼さんのお母さん。
忙しい方だから会えないかもしれないと思っていたけど、会えてよかった。

「先日はドレスありがとうございました。お礼が遅くなってしまい、申し訳ありません。」

スタッフのみなさんで召し上がっていただけるようにと焼き菓子を渡すと、スタッフの方たちは甘いものに目がないのだと言い、満面の笑みで受け取ってくれた。

「ここのお菓子、有名なのよね。でも、わざわざ良かったのに。涼のあの驚いた顔が見られただけで十分よ。」

ウインクして見せた顔は可愛らしくて、同性なのにドキっとしてしまい、顔がにやけてしまう。
でも今日、ここに来たのはお礼をすることだけが目的ではないと、気を引き締め直す。

「お願いがあるのですが。」

「何かしら?」

「涼さんが好む服を選んでいただけないでしょうか。」

「涼が好む服?それを言うってことはそういうことかしら?」

うなずいて見せると、涼さん母の表情はぱあっと明るくなり、ぎゅっと抱きしめられた。

「く、くるし…」

「だって嬉しいんだもの!こんな可愛いお嫁さんが出来て!涼のこと、お願いね!」

「いや、まだ嫁という話では…」

「え?!そうなの?あの子、まだプロポーズしていないの?」

「プロ…!?」
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