理屈抜きの恋
耳元でその台詞が聞こえた時、胸が一際大きくドキっと跳ねた。
と同時に、主役である新郎新婦にスポットライトが当たる。

スポットライトによって室内が少し明るくなったのをきっかけに最上くんは私から体を離したけど、私は恥ずかしくて後ろを振り向けない。
何、今の?
本気?

「みなさん、注目―!これから新郎が一枚目を引きまーす。」

それが合図だったかのように室内にはドラムロールが鳴り響き、新郎が箱から一枚紙を引いた。
その紙を手に取り、もったいぶる司会者を食い入るように見つめる。

「一人目は…」

ジャーン♩

「最上爽さーん!」

「あ!俺ー!」

「!?」

一番初めに呼ばれるなんて、ある意味凄い。
思わず振り向いたら最上くんは私を見ていた。

「俺、呼ばれた。あとは撫子の名前が呼ばれない事を祈るのみっ!」

そんな風に祈るということは、先ほどの言葉や態度はからかったわけではない、と理解しても良いのだろうか。
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