理屈抜きの恋
でも、なんで私?
今までそんな素振り見せたことなかったのに。

「二人目は新婦が引きますよ。さて、二人目は…」

ジャーン♩

「神野撫子さーん!」

あらら?
この場合、どうするんだろう?

ゆっくり振り向いて、最上くんの様子を伺うと、そこには難しい表情をした最上くんがいた。

「もう一度チャンスをくれ。」

「チャンス?」

「俺か撫子のビンゴが成立したら、今日の撫子の時間を全て俺にくれないか?」

「え?」

「ダメか?」

「そ、そんなのゲームにしなくたって…」

そこまで言ったところで、何言っているんだ、と我に返った私は言葉を隠すために急いで口に右手を当てた。
ついさっきまで恋は仕事の邪魔になる、からかわれているだけって思っていたばかりなのに。

本能がそうさせたのかと思ったら無性に恥ずかしくて、ビンゴ用の紙を握っていた左手も重ねて口を押えると、重ねた上側の手が取られ、ギュッと握られた。

その感覚に思わず最上くんの方を向くと、あの女性を虜にしてしまう甘い笑顔で私の方を見た。
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