理屈抜きの恋
そのほとんどが仕事の関係者。

今日の披露パーティーが、社内恋愛の末に結婚した二人のためのものだから当然といえば当然だけど、見知った顔の多くはすでに赤い。

新郎の直属の上司に当たる社長がお祝いに来ているはずだから、お酒はほどほどにしないと、と思うけど、おめでたい席ではある程度の無礼講が働く。

私も、と、そばに来てくれたウェイターからシャンパンを貰い、一口含む。
甘口のシャンパンは飲みやすくて、気を付けないといくらでも飲めそうだ。

シャンパングラスを持ったまま、会場の中心へと歩を進めると、すでにいくつかのグループが出来ていた。

立食形式だから席は決まっていない。

各グループ内にいる誰かと目が合う度に会釈して歩くと、端っこの方に肩身を狭そうにしている女の子を見つけた。

「細井さん。」

「あ、撫子さん!やっと来たー!」

細井さんは2つ下の後輩。
体型と比例しない苗字のせいで入社当初からよくからかわれている。
でも、細井さんの白くて張りのある肌は思わず触りたくなってしまう程、柔らかそうで女性的で美しい。
同性でそう思うのだから、異性が放っておくはずがない。
ただ、そのせいで女ウケが悪いのは言うまでもなく、今も会場内にいる女性社員たちから孤立させられた状態で私を待っていたのだと思うと少し胸が痛んだ。

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