理屈抜きの恋
「最上爽?何?彼氏?」

「違います、っていうか、あなたに関係ないことだし。それより返して下さいっ。」

出来る限り手を伸ばすもやはり届かない。
仕方なくシートベルトを外し、距離を縮めようとしていると、携帯の着信音が切れた。

「もしかして、こいつのこと好きなのか?さっきは具合悪いんだと思ったけど、こいつのせいで凹んでいた、とか?失恋?」

「あなたに関係のないことだって言っているでしょ?もう、いい加減、返して下さいっ!」

シートベルトを完全に外し、本宮涼の方へと身体ごと近づき、手を伸ばす。
するとその手が取られた。

「関係あるんだな、これが。」

「え?」

私を掴んでいた手に一瞬力が入り、ぐいっと本宮涼側に引っ張られる。
一転して抱きしめられるような態勢に変われば、頭は真っ白になり、何が起きたのかさえ把握できずにいた。

「お礼。やっぱりしてもらおうかな。」

「え?お礼?」

何も考えられないような状態でも、身体を奪われるかもしれないその言葉に寒気がして、身体を硬直させると、それに気が付いた本宮涼は腕の力を弱めた。

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