理屈抜きの恋
副社長付の秘書になってから早いもので2か月が経った。
今でこそようやく総務課の引き継ぎと秘書の仕事という兼任はなくなったけど、忙しいことに変わりはない。

2か月前、本宮涼改め副社長にキスをされて手を引かれ連れて行かれた先が秘書室だったことには驚いた。
さらに副社長が会長の孫だという事実を知らされ、専属秘書になれ、と言われた時にはもう何がなんだか分からず混乱してしまい、一息には処理できなかった。
それでも、なんだかんだと仕事を始めるうちに、充実した毎日を過ごせるようになり、今では仕事が楽しくなってきた。

ただ、初日のキスと印象的なあの瞳が響いていて、気を付けないと副社長のことを強烈に意識してしまう。

だから余計なことを考えないように仕事を必要以上に頑張っているのだけど、さすがに疲れが溜まってきた。

副社長が出勤して来る前にマムシの絵が大きく描かれた栄養ドリンクを一気に飲み、気合いを入れる。

「じゃあ、始めようか。」

朝一の仕事は、スケジュールの確認作業、と副社長との間で決めた。
急な変更があればこの場で調整する事が出来るし、ダブルチェックにもなる。地味な作業だけど、とても大事な作業。

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