理屈抜きの恋
体調管理も仕事のうちなのに。

帰ったら怒られるだろうな…。

それから30分、ちょこちょこ様子を見に来てくれる鵠沼さんのお言葉に甘えてソファで休んでいると、時間通りにドアが開き、副社長が息を上げて戻って来た。

「走って来たんですか?」

「はぁはぁ。帰るぞ。」

「すみません。本当に。でも、だいぶ楽になりましたから、やっぱり一人で帰ります。副社長に移してもいけないし…って何するんですか?!」

副社長にお姫様抱っこをされるのはこれで3回目。
でも、一向になれる気配はない。
というよりも人の話しを聞いていなかったのだろうか。
少し痛む頭がさらに痛む。

「風邪だとしたら、移っちゃいます。」

マスクがないから口元を掌で押さえると、その手が外されて副社長の首元に回された。

「君を苦しめる風邪の菌など俺の所に来ればいい。そんなもんどこかに吹き飛ばしてやる。」

そんな無茶苦茶な…。

「人の心配をしていないで、自分の事だけ考えろ。大丈夫だ。俺が付いているから。」

熱で頭が完全におかしくなっていたのだと思う。
優しい副社長の言葉と笑みに胸が締め付けられて、いつの間にか自分からギュッと抱きついていた。
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