理屈抜きの恋
「ただいま〜」

「お帰りー、ってどうしたの?そちらは?」

玄関先に出てきてくれた神野母が彼女を支える俺を見て驚き目を丸くした。

「撫子さんの上司の本宮です。熱があるようなのでお連れしました。」

「熱?やっぱり無理したのね?ちゃんと薬飲まなかったんでしょ。全く、薬嫌いにも程があるわ。」

「飲んだよ。カプセルのやつ。」

「粉薬を飲みなさい、って言ったでしょ?全く、どうしようもない子ね。あぁ、もう、おとうさーん!ちょっと撫子の具合診て頂戴!」

「どうした?え?そちらは?」

パジャマ姿で登場した神野父もまた俺を見るなり目を丸くする。
そして同じように挨拶すると申し訳なさそうに一度頭を下げてから娘に視線を向けた。

「やっぱり熱出たのか。薬…は飲んでないんだな?全く、粉薬嫌いで困るな。錠剤あったかな?ほら、撫子、こっちに来なさい。」

夫婦で同じようなことを口走っていたのがおかしくて、笑うべき場所ではないのだが、笑ってしまうと、側にいた神野母がしげしげと俺の顔を見た。

「ねぇ、あなた、まさかとは思うけど、先日のホストかしら?」

「あぁ、多分、そうですね。」

「やっぱり。え?撫子の上司の方なの?て事は副社長!?驚いた。ホストは副業?」

ホストは余興のためのもので、本業は会社役員だと説明しても、あまり納得はしていない様子。

挙句の果てには「ホストクラブ、行ってみたかったのに。」と言い出した。
< 95 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop