【長編】戦(イクサ)小早川秀秋篇
連鎖反応
 家康は信雄が秀吉になびかない
うちに事を進めようとあせってい
た。この頃、家康に味方する香宗
我部親泰が讃岐を攻略したと聞く
とすぐに家臣の本多正信を使者と
して送り、淡路を攻めるように奨
励した。そして家康自身は伊勢へ
進軍して上洛を目指す予定だっ
た。しかし秀吉が美濃へ進軍して
きたため延期せざるおえなかっ
た。
 秀吉は尾張のいたる所に放火さ
せ家康を足止めさせた。そして家
康の本拠地、三河を狙う構えを見
せた。これを機に各地で連鎖反応
のように戦が発生した。
 近畿では香宗我部親泰の兄、長
宗我部元親が挙兵し淡路、摂津、
播磨を次々と攻略していった。
 九州では今は廃れた室町幕府の
第十五代将軍、足利義昭が幕府の
復興を狙い、毛利輝元、小早川隆
景、吉川元春を介して島津義久に
大友義鎮を討つように要請してい
た。
 北陸でも北条氏直が挙兵の準備
を進めていた。

 秀吉が家康を引き付けている間
に、千宗易が密かに信雄のもとに
送られた。
 宗易は秀吉の茶頭、堺商人、茶
人という三つの顔を巧みに使い分
けていた。
 信雄の配下にあった叔父の長益
は宗易の門人であり、茶人として
現れた宗易を快く迎え入れた。信
雄も父、信長の茶頭だった宗易を
歓迎した。それにどうしても聞き
たいことがあった。
< 25 / 138 >

この作品をシェア

pagetop