【長編】戦(イクサ)小早川秀秋篇
秀吉×光秀
 光秀の凶行をいち早く知り、真
先に帰ったのは秀吉だった。その
あまりにも早い帰還に光秀は諸大
名に援軍を要請したが集まらず、
兵一万六千人で摂津と山城の境、
山崎に出陣した。
 秀吉は自らの兵二万人に加え、
信長の三男、信孝や丹羽長秀など
と合流し、総勢三万六千人で対陣
した。
 光秀はすぐに使者を出し、秀吉
との話し合いを求めたが、秀吉軍
は兵力差にものをいわせ、明智軍
を三方から攻めて敗走させた。
 一時は逃げ延びた光秀だが、
京、醍醐周辺で一揆の衆に討ち取
られた。
 その頃すでにねねたちは避難し
ていた総持寺から屋敷に戻ってい
た。
 しばらくして意気揚揚と帰って
くる秀吉をねねたちは出迎えた。
 秀吉はこの時、四十六歳、日焼
けした肌に艶があり、光秀を討っ
た達成感で精気に満ちていた。
 辰之助が生まれたことは手紙で
知っていたが、やっと抱きかかえ
ることができ、踊るように喜ん
だ。
 秀吉とねねの間には子がいな
かったので、信長の四男・秀勝を
養子に迎え、この年には秀吉の
姉・日秀の子、秀次を養子に迎え
ていた。
 跡継ぎの心配はなかったが、辰
之助の愛くるしい顔を眺めている
とやはり自分の子が欲しいと思わ
ずにはいられなかった。
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