【長編】戦(イクサ)小早川秀秋篇
天下統一
 小田原城内では豊臣軍に内通す
る者が見つかりお互いに疑心暗鬼
になっていた。このまま籠城し続
けるか降伏するかで意見が別れ、
将兵の士気が低下していった。
 家康のもとにはこうした北条軍
の内情がつぶさに入り、それに対
する説得工作を続けていた。
 家康はこれ以上長引けば領民が
苦しむだけで、得をするのは秀吉
だと説いた。そして石垣山で秀吉
が毎日、何をしているかを伝える
だけだった。それだけで十分だっ
た。
 北条軍の間では秀吉が女や子ら
まで呼んで茶会や宴会を開き、攻
めてくる様子がないことで、降伏
しても凶行はしないという見方が
しだいに強くなった。そして七月
に入って間もなく北条氏直は家康
の陣営に自らの切腹と引き換えに
家臣と領民の助命を願い出て降伏
した。
 秀吉は氏直の申し出を受け入
れ、氏直を高野山に追放した。そ
の後、北条氏政、氏照は自刃し
た。こうして北条氏は事実上滅亡
した。
 戦わずして天下を取る秀吉に秀
俊も少しは貢献したのかもしれな
い。
 秀吉は淀、秀俊、利休らを京に
帰すと自らは陸奥に向かった。
 陸奥、会津の伊達政宗は小田原
の北条氏が秀吉に屈服したことを
知るとすぐに恭順の姿勢を示し秀
吉を迎え入れた。
 今まで誰もなし得なかった天下
統一が信長から秀吉に受け継がれ
てやっと成し遂げられた。
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