【長編】戦(イクサ)小早川秀秋篇
 もし肉体の再生ができるのなら
試してみたいとも思っていた。だ
から黒人の奴隷として日本に連れ
てこられたヤスケを家臣にしてま
でシャーマニズムの延命の呪術を
聞き出そうとした。
 そのことを茶の湯の会話の中で
知っていた宗易は信長が自分を錬
金術師のように思っていることを
利用し、ヤスケから延命の呪術を
聞きだす役を願い出た。そしてこ
のことを秀吉に知らせ信長暗殺の
計画を練った。
 ちょうどこの頃、秀吉は備中に
毛利討伐に出兵することになり、
他の信長家臣も各地で戦をしてい
て信長を無防備にしやすい状態に
あった。そこで秀吉は出兵してし
ばらくすると信長に「苦戦してい
る」と訴え出兵要請をした。
 宗易は茶人仲間で博多の商人、
島井宗室を信長のもとに向かわせ
た。そして、「宗易殿からご要望
の延命の呪術に必要な供物が揃い
ました。また宗易殿からの言付け
で、揃えた供物は本能寺に運び、
施術の準備をするように、施術す
る時は誰にも邪魔されないように
警戒を厳重にするように」と告げ
させた。
 これに喜んだ信長は本能寺に向
かい、誘い出すことに成功した。
 宗易自身は京にいた徳川家康の
もとで茶会を開き家康の動きを封
じた。
 延命の呪術をする時、警戒にあ
たらせる部隊として本能寺の近く
にいたのは信長との関係が悪化し
ていた明智光秀の部隊だけだっ
た。
 この時、光秀の部隊がいたのは
信長に命じられ秀吉の援軍に向か
う途中、京で「馬揃え」という武
者行列を披露することになってい
たからだ。
 宗易は信長が延命の呪術をする
時の敷物を近くで見れば楕円の魔
方陣が描かれたものにした。それ
は遠くからは帝の菊の御紋に見え
た。この様子を光秀が見ると帝を
信長が踏みつけていると錯覚し激
怒することを狙ったものだった。
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