【長編】戦(イクサ)小早川秀秋篇
明軍の参戦
 しばらくすると朝鮮からの要請
にこたえて明軍が支援に動き出
し、戦いはこう着状態となった。
この時、日本軍は初めて明軍が使
用した大将軍砲、威遠砲などの大
砲と火箭(かせん)と呼ばれる火
を噴いて飛んでいく砲弾などの新
兵器を目の当たりにし、その威力
を身をもって体験した。これらは
大友義鎮が使用していた大砲とは
比べ物にならない破壊力があっ
た。

 十一月に肥前、名護屋城に戻っ
た秀吉は朝鮮侵攻が順調に進んで
いるものと思っていた。
 朝鮮の各地で起きている義兵の
反撃を日本の一揆程度に考え、制
圧した地域での築城が進んでいる
様子を想像していたのだ。
 余裕を取り戻した秀吉は連れて
来た淀、松の丸らと名護屋の町内
を見物して楽しみ、すでに来てい
た徳川家康と前田利家を呼んで、
千利休の呪いを吹っ切るように名
護屋城に黄金の茶室を組み立て、
新しく茶頭にした古田織部に茶を
点てさせた。
 織部は大名でありながら利休の
死後も弟子として侘び茶を続けて
いた。この詫び茶特有の狭い茶室
には茶を立てる者と茶を飲む者の
間に無意識のうちに師弟関係がで
きる効果があることが分かり、そ
れを知った秀吉は諸大名を手懐け
ることに利用するため京、伏見に
建築する邸宅の趣向は皮肉にも利
休好みにするよう命じていた。

 冬が近づくにつれ日本軍の武
器、弾薬、兵糧の補給が困難にな
り、各部隊は次々に退却をよぎな
くされた。
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