【長編】戦(イクサ)小早川秀秋篇
秀秋の船出
 秀秋は自分が総大将になったこ
とを秀次の代わりに選ばれたのだ
と淡々と受け止めていた。すぐに
準備を始め、まず朝鮮に渡るのに
必要な軍船の資材を調達すること
にした。そこで名島城の近くにあ
る杉山から杉の大木を伐採するこ
とを決めた。
 杉山の杉は以前、領主だった大
内義隆が御神木として伐採禁止令
を出していた。そのためちょうど
良い大木に成長していた。
 御神木だから軍船にすれば神の
ご加護もあるだろうと、選ばれた
杉を慎重に切り出し、その場所に
は新しい杉の苗木を植えた。そこ
でこの杉山を分杉山、若杉山とこ
の時から呼ぶようになった。
 次に秀秋は浪人をかき集めた。
そして全ての家臣の中から朝鮮に
出兵する家臣を選び、その家臣と
供に野駆けや巻狩りなどをして軍
事訓練をおこなった。この頃はま
だ小早川家の元家臣と豊臣家の元
家臣は気が合わずギクシャクとし
た関係が続いていたが、秀秋はお
かまいなしでケンカをするのも
笑ってみていた。
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