課長と私
「ふ…藤崎、どこに行くの…」
「…あのな、自分のこと下心あって話しかけてるやつの前で、そういう顔したら…」
気づかないうちに、人通りの少ない道に進んでいた。
立ち止まった藤崎がこちらを向く。
「本当にお前は…」
「……。」
「…そんな顔して、良く彼氏のところに戻りたいなんて言えるな。」
つながっている手が熱い。
心臓の音が手を伝って聞こえそうなくらいだ。
私のぐらついている心がまだ定まらない。
動揺しているんだ、藤崎に。
こんなに素直に、ありのままの感情ぶつけてくる奴なんていないだろうけど。
「俺じゃなくても、今のお前見たら…自分も脈ありなんじゃないかって思う。」
「…それは…」
「俺は今、そう思ってる。」
「……。」
「何も言わないなら、そう解釈する。…だから、無理矢理でもいいから…俺のものにしたい。」
その言葉に今いる場所をやっと確認できた。
私達の周りにはビジネスホテルが並んでいた。
「俺だって、男なんだけど…」
「ちょ、待って藤崎…落ち着いて…」
「落ち着いてる。割と。」
「じゃ…じゃあなんでこんなとこ…」
「言っただろ。…俺も男だし…無理矢理でもいいから、俺のものにしたいって。」
胸が苦しい。
ごまかそうとしている私の中に罪悪感のようなものが生まれる。
こんなにストレートに告白されてるのに、応えようとしない私は卑怯な気がする。