課長と私

「ふ…藤崎、どこに行くの…」

「…あのな、自分のこと下心あって話しかけてるやつの前で、そういう顔したら…」


気づかないうちに、人通りの少ない道に進んでいた。
立ち止まった藤崎がこちらを向く。


「本当にお前は…」

「……。」

「…そんな顔して、良く彼氏のところに戻りたいなんて言えるな。」


つながっている手が熱い。
心臓の音が手を伝って聞こえそうなくらいだ。

私のぐらついている心がまだ定まらない。
動揺しているんだ、藤崎に。

こんなに素直に、ありのままの感情ぶつけてくる奴なんていないだろうけど。


「俺じゃなくても、今のお前見たら…自分も脈ありなんじゃないかって思う。」

「…それは…」

「俺は今、そう思ってる。」

「……。」

「何も言わないなら、そう解釈する。…だから、無理矢理でもいいから…俺のものにしたい。」


その言葉に今いる場所をやっと確認できた。
私達の周りにはビジネスホテルが並んでいた。


「俺だって、男なんだけど…」

「ちょ、待って藤崎…落ち着いて…」

「落ち着いてる。割と。」

「じゃ…じゃあなんでこんなとこ…」

「言っただろ。…俺も男だし…無理矢理でもいいから、俺のものにしたいって。」


胸が苦しい。
ごまかそうとしている私の中に罪悪感のようなものが生まれる。

こんなにストレートに告白されてるのに、応えようとしない私は卑怯な気がする。

< 103 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop