課長と私

「…ん。」




じんわりと体温が私の中まで入ってくるようだった。






「…嬉しいのに、生殺しだ…」




「何がですか?」




「うん…。こっちの話。」







体調が戻って来た私はそのあと普通にお風呂へ入り、ためていた百合さんのラインを返してベッドにもぐりこんだ。






「姉さんと話してるの?結婚式の。」





「あ…はい。百合さんの方でほとんど決めてもらってて…ありがたいです。」





「あの人はそういう人だから…甘えとけば?」





「亮くん、やりたくないんですか?結婚式。」





「そう…じゃないけど…」





「私、タキシード姿の亮くん見たいんですけど…着てくれます?」





「……楓ちゃんもウエディングドレス着てくれるよね?」





「着る、絶対着ます…似合うかは分からないけど…」





そういえば何も自分の手入れが出来てない。
大丈夫か私…






「似合うよ…絶対。」




「そうですか?」





「うん。…絶対。」






とろんとしてきた目が静かに閉じる。


私も彼の寝顔を見てから目を閉じた。
< 199 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop