体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
サンダルを履いて優とふたり、外に出た。

「暑いね」

美弥は空を――真夏の青い空――を見あげた。
そして息が止まるくらい熱した空気の中で、優といると楽しいと、素直に認めた。
そしてこの先、自分と優に特別な未来がなくても、それでいいと思えた。

今がこんなに楽しいなら。
何もなかったより、ずっと、ずっといい。
きっと―――。
この夏、優と過ごせてよかった。
とてもとても、よかった―――。

「どうした? 下田の空に恋でもした?」
空を仰いで微笑む美弥を見て優が笑う。

「うん。沖田優がいるのを忘れるほどに素敵だなーと思って」
「夏の空にはどんな男だってかなわないよ」と言って、優は日焼けした長い腕を美弥の首にからませ、「早く氷、食べに行こう」と歩き出す。

なだらかな細い下り坂。
つんつんして、つやつやと光っている夏草が、長く高く伸びて道の左右を覆っている。
青々しい草いきれを肌に感じながら、2人はペタペタと熱したアスファルトを蹴っていった。

もうすぐ、勉強会は終わりになる――。
答えなど、美弥にはもうすっかりわかっていた。
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