体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
優が父、勇から電話をもらったのは、食事を終えて、美弥と一緒にテラスでビールを飲んでいた時だ。
スマホの着信音が、波の音に混じって響いた。
優は着信元が勇であることを確認すると、「もしもーし」と明るく電話に出た。優にとって勇は「尊敬する父であり、何でも話せる楽しい友人だ。

「お前、結婚するのか?」

勇は、いつもこんな風だ。
“こんな風”というのは、「もしもし」も「俺だ」も「元気か」もなにも前置きがなく、いきなり要件に入る。
「飯、食いに行こう」「マウンテンバイクを貸してくれ」「釣りに行かないか」という要件が先にあり、その後に理由やディテールがついてくる。まるで英語の構文のようだ。
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