体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
「何で俺んとこで拭くんだよ」
「近くにあったから」
「自分ので拭けばいいじゃん」
「別にいいじゃない。細かいなあ」
「細かくねーよ。いいよ、許してやるからライチの皮むいて食べさせろ」
「食べさせろって、なに威張ってんの?」
と、横目で一睨みして、それでもライチの皮をくるりとむいて優の口の前に持って行った。

差し出された白い果実を、優は美弥の指ごと口に含んだ。
1秒、2秒――ほんの一瞬見つめ合ったあと、美弥は微笑みながら指を静かに抜いた。

「私の指まで食べないで」

美弥は濡れた指を、また優のTシャツで拭った。

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