体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
いずれにしてもまず綾香に詫び、付き合いを解消することが先決だ
勇がいっていたとおり、時間を先送りすればするほど、自分の罪は重くなる。

東京に戻ったらすぐに綾香に別れを切り出さなくてはならない。美弥に思いを告げるのはそれからだ。
そう胸の中で整理して、優は
「わかったよ」
と答えた。

その返事を聞くと美弥は首をくるりと優の方に向け、やけに明るい顔で
「そうだ、食べるの忘れてた」
と、トートバッグの中からライチとチーズを取り出した。

赤いライチの固い皮をむいて美弥は口に入れ、優はミモレットのチーズのスライスを一かけら食べてから、2人のグラスにワインを継ぎ足した。

弾力のある果実を噛むとうっとりするような甘さと香りが口の中に広がり、美弥は
「うーん、おいしい」
と言って、果汁でぬれた指を優のTシャツでぬぐった。
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