囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


及川隼哉は、私の勤める地方銀行の同期で、配属された支店まで同じの、同い年の男だ。

『〝深月華〟って綺麗な名前だなー』なんて言いながら話しかけてきたと思った次の瞬間には、『なんか日本酒にありそう』とか言ってへらっと笑っていて。

その笑顔を見て、へらへらしてるなーとか、軽そうだなーという印象を受けたと同時に、すごいモテそうだなと思った。

甘く整った、というよりは、綺麗だとか美形の方が言葉として合う顔立ちに、どちらかと言えばがっしりした体型。
Yシャツになるとよく分かるけど、腰回りは細く肩幅がある。
あとから高校時代バレーボールをやっていて、大学でもかじっていたと聞いて、なるほどと思った。

無駄のない身体つきというか、なんというか。Yシャツに浮き出る締まったラインは女の私でも思わず見入ってしまうほどに綺麗だと思う。

性格は、どちらかと言えば悪い。
いつも余裕のあるスタンスで、人をからかってニヤニヤして楽しんでいるような男だ。
優しくないわけではないし、悪いヤツかと聞かれればそんな事もないのだけど、いい人じゃないのは確かだった。

特に恋愛ってなると。
ゲーム感覚で、狙った子を落とすまでを楽しんでいる様子は見ていて不快だったし、今でも嫌だ。
しかも、振り向かれた途端にその子に興味が失せてしまうのだから性質が悪い。

もっとも、及川のそんな恋愛ゲームも、入社してしばらくした頃には見なくなっていたけれど。
どういう心境の変化かは、聞いてみても教えてはくれずはぐらかされたから知らない。

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