囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


その日、仕事を終えて、更衣室で着替えを済ませてから外に出ると、すぐにスマホが鳴った。
メールを知らせる音に、立ち止まって内容を確認すると、差出人は及川で。

支店の駐車場で少し待っててって事だったから、なんだろうと思いながらも待つことにする。

19時前の空はもう暗い。
季節は春と夏の合間だけど、暑いというよりはまだ暖かいと言える風がゆるく吹いていた。
そこには湿気が含まれていて、そろそろ梅雨かなーと考えながら空を見上げる。

最近の梅雨は暑いし、気温的に言えば、もう片足夏に突っ込んでいるようなものだ。
とは言え、まだそこまでの暑さじゃないのに、Yシャツを豪快に腕まくりして帰っていった大崎くんの体温はどうなってるんだろう。

運動してると新陳代謝とかがよくなって、暑がりになったりするのかな。
……なんかでも大崎くんは特別な気がするけど。

さっき別れた大崎くんのくったくのない笑顔を思い出し、ふっと苦笑いが漏れる。
今日も大崎くんは散々だったなぁと。

まぁ、それでも弱音を吐くわけでもなく、毎朝リセットされたみたいに元気な顔で出社してくるんだから本当にいい子だ。

野球に比べたら仕事なんか疲れるうちにも入らないのかなぁ。
私も何か運動やっておけばよかった。

一日の業務と大崎くんのコーチ、それと一時間半の残業で割と疲れている自分にそんな事を考えていると、「深月、急に悪いなー」と言いながらこちらに歩いてくる及川に気付いた。

及川も暑いのか、大崎くんほどまでとはいかないけど、肘の下までYシャツをまくってネクタイは緩めていた。

営業は20時近くまで残業する事も多いから、それに比べたら今日は随分早上がりだ。



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