囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


「んー、居酒屋じゃなければいいけど。何?」
「ああ、深月、居酒屋の匂い嫌いだもんな。別に何か話があるとかじゃないけど、何か食ってこうかなってだけ。
じゃあ、そこのファミレス寄る?」
「奢り?」
「あー、給料日後だったら奢れたのに」

「じゃあ給料日後に誘ってよ」と呆れ笑いをこぼしながら、並んで歩く。
支店から徒歩五分にも満たない距離を歩いて入ったファミレスは、給料日前の平日だからかあまり混み合ってはいなかった。

これが金曜ってなるとまた少し違ってくるのかもしれないけれど、今日は木曜だし、曜日の関係もあるのかもしれない。

及川も私も煙草を吸わないから、禁煙席に案内してもらってメニュー表を開く。
開いたところで、頼むものは大体決まっているんだけど。
ここのファミレスはよく寄るから。

「エビのグラタンとドリンクバーとコーヒーゼリー」

メニュー表を及川の方に押し付けながら言うと、「深月それ好きだなー」と言われたけど。

「ハヤシとサラミピザとドリンクバー」
「及川だってそれしか頼まないくせに」
「あんまり挑戦するタイプじゃないんだよなー」
「滅多に来ない場所ならそれも分かるけど、ここなんてもう何十回ってきてるんだから挑戦すればいいのに」
「いや、怖い。俺、結構、軸になる部分って大事にしたいから」

「深月こそ人の事言えないだろ」という言葉に「一途なので」と返してから、ウエイターを呼ぶ。
すぐに来てくれたウエイターに及川がまとめて注文した後で、ドリングバーで飲み物をそれぞれ入れた。

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