愛されたい
会社の近くの麺屋で、同僚の男と向かい合ってそばを食べる。

「アキ、遅刻ギリギリだったじゃん。どうしたの?」

「寝坊」

今日のは私は悪くはないと思うが。

「何々?夜行性彼氏さんがベッドから放してくれなかった?」

とりあえずテーブルの下で男の足を思いきり踏んでおく。男は痛みに悶えた。ざまあみろ。

「で、でも、そうだろ?一度“始めたら”中々終わらなくて困ってる。そう、男の俺に相談してきた女は誰だったけ?」

「知らない」

男はため息をついた「でもさ、そいつ、大丈夫なの?俺らと同じ年齢なのに、働いてないんだろ?」

「いつ同じ年齢だと言った?私たちより五つは上」

そして、前は働いていた。

「人間が無理なんだってさ。怖いんだって」

「よく恋人を見つけられたね、その人」

「恋、ねえ.....」私は箸を止める「恋ってさ、愛の一部なんだよね」

「いきなり何さ」

「言葉って不思議。“愛してる”と言えば、その人に向けてしていることを主張しているように聞こえるけれど、“恋してる”と言えば、それは自分がしていることを主張しているように聞こえる。でもある人は、“愛”は好きだけど“恋”は嫌いだと言う人がいる」
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