強引な彼との社内恋愛事情*2
「谷くん、歌いなよ」
「俺、音痴ですよ」
「そういうこと言う人って、本当は上手いんだから」
「じゃあ、遠山さんも一緒ですね」と微笑む。
なんだか上質な笑顔に感じた。きっと、何人もの女性をその気にさせてきたんだろうな、と思ってしまう程。
だからか、広重と被って見えた。
谷くんも広重みたいなタイプかもしれない。
明るくて、要領がいいというか。なにもしなくても、いるだけで、人に好かれるようなタイプ。
「谷くんって、彼女いるの?」
なんとなく訊いてしまった。きっと、比べたくなったんだと思う。
どんな人と付き合っているのかってこと。
想像するのは、愛されることをよく知っていて、ふわふわとか、抱きしめたいとか、守ってあげたいとか、そんな言葉が似合う愛くるしい子。
「ん?いますよ」
「へえ。どういう子?」
「どういう子?」と目をパチクリさせた。
質問の仕方が可笑しかったのかな、と、慌ててなんでもないと誤魔化した。