その唇に魔法をかけて、
「別に今生の生き別れじゃないんだから、いい顔して見送ってあげなね」

「美貴! 頑張って!」

 かえでに下げた頭を上げると、そこに彩乃と陽子がいた。

「今から行けば、響兄ちゃんの乗る飛行機に間に合うよ!」

「深川さん、駅に行くバスが後十分で来るみたい。急いで」

 心強いふたりからの声援を受け、美貴はこくんと頷いた。

 和服のままだったが、着替える時間も惜しくその足で空港に向かう。花城の手を掴むために。

「深川さん……」

 しかし、そんな様子を影からずっと窺っていた視線があった。

「深川さんは……僕のものだ」

 空気を握りつぶすように、その視線の主はぐっと拳に力を込めた――。
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