その唇に魔法をかけて、
(うわっ! な、なにこれ……)
心に決めたそばから、すでにもう部屋から逃げ出したい気分になった。漆畑は真っ赤な顔をして服を乱し、すでにできあがっていたのだ。思わず鼻をつまんでしまいそうになるくらいに酒の匂いと嫌な湿気が充満していて、畳の上には空になったビール瓶が数本転がっている。
「お! 来た来た! 待ってたよ~なかなか部屋に来ないから牧田に呼びに行かせたんだ」
「そ、そうでしたか、遅れまして申し訳ありません」
そう言いながらテーブルの上にこぼしているツマミを片付け、布巾でさっと拭く。
「専務、少々飲み過ぎでは……?」
「ふん、お前は黙っていろ。いい気分が台無しだ、ほら、酒を注いでくれ」
漆畑が銚子をずいっと突き出して酌をせがむ。
「あ、はい! ただいま」
(えっと、確か銚子の首を持っちゃだめなんだよね、目安は八分目……あらかじめかえでさんにお酌のマナー教えてもらっておいてよかった……)
「おーっとっと、いいねぇ君、近くでみると美人じゃないか、仕草も綺麗だし気に入ったよ」
頭の中で何度もシミュレーションをしていたおかげか、漆畑はご機嫌に表面張力で震えている日本酒に吸いつく。実際は難しいことなどなにもないはずなのだが、緊張で手が僅かに震えていた。
「なんだ、手が震えているじゃないか」
「っ!?」
するといきなり漆畑が美貴の手をぐっと握った。ヌメっとした生温かなその感触に思わず腰が浮きそうになる。
心に決めたそばから、すでにもう部屋から逃げ出したい気分になった。漆畑は真っ赤な顔をして服を乱し、すでにできあがっていたのだ。思わず鼻をつまんでしまいそうになるくらいに酒の匂いと嫌な湿気が充満していて、畳の上には空になったビール瓶が数本転がっている。
「お! 来た来た! 待ってたよ~なかなか部屋に来ないから牧田に呼びに行かせたんだ」
「そ、そうでしたか、遅れまして申し訳ありません」
そう言いながらテーブルの上にこぼしているツマミを片付け、布巾でさっと拭く。
「専務、少々飲み過ぎでは……?」
「ふん、お前は黙っていろ。いい気分が台無しだ、ほら、酒を注いでくれ」
漆畑が銚子をずいっと突き出して酌をせがむ。
「あ、はい! ただいま」
(えっと、確か銚子の首を持っちゃだめなんだよね、目安は八分目……あらかじめかえでさんにお酌のマナー教えてもらっておいてよかった……)
「おーっとっと、いいねぇ君、近くでみると美人じゃないか、仕草も綺麗だし気に入ったよ」
頭の中で何度もシミュレーションをしていたおかげか、漆畑はご機嫌に表面張力で震えている日本酒に吸いつく。実際は難しいことなどなにもないはずなのだが、緊張で手が僅かに震えていた。
「なんだ、手が震えているじゃないか」
「っ!?」
するといきなり漆畑が美貴の手をぐっと握った。ヌメっとした生温かなその感触に思わず腰が浮きそうになる。