大きな河の流れるまちで〜番外編 虎太郎の逆襲〜
山下先生は僕達に向き直り、
「君は院長の娘のあやめちゃんかな?もう、学校は休みなの?僕は少し、虎太郎君の話があるんだけど、一緒に聞くのかな?」と僕達の顔を見る。あやめは僕の顔を見て、頷く。山下先生は、君達の両親も一緒に話を聞かせても構わないって、言ってたからね。と笑い、
「虎太郎君の左足はさっきの女の子が言ってたように膝と足首の丁度真ん中あたりで、折れて、外に飛び出した開放骨折っていう状態だった。後ろから、一点に力がかかって、骨がそこで、折れたんだね。うん。結構綺麗に折れたから、傷の状態もそんなに、悪くなくて、上手くくっつけられると思う。でも、足の骨はは体重を支えなきゃいけないから、補強するために大きく切り開いてプレートって言う金属みたいなヤツに留めつけることにした。開放骨折にしては、まあ、軽症の部類かな。関節も壊れていないし。折れた骨の周りの組織は剥がれたり、大きく損なわれてるけどね。ひどく炎症を起こさないよう、点滴の薬で抑えるけど、しばらく安静だよ。左足に負荷をかけず、右足や上半身は、マッサージや、リハビリをしていく。3週間ぐらい入院で、その後は松葉杖で、足に体重をかけずに生活する。普通に歩けるようになるのに3カ月ぐらいかかるかな。その後は、君の努力次第で、走ったり、サッカーもできるようになるかもしれないけど、急になんでも出来るようにはならない。少しずつ、少しずつだよ。」と言った。僕は口がきけない。結構サッカーできなくなるんだな。っていうことだけが分かった。山下先生はにっこりして、
「今は、全部理解できなくてもいいよ。何度でも、説明する。とりあえず、今日は、大人しくしていること。オナラが出たら、ご飯はたべさせてあげよう。」といって、午後に、また来るよ。と部屋を出て行った。
「あんまり、痛くないから、直ぐ歩けるようになると思ってた。」と僕は呟く。あやめが、
「持続で麻酔薬を使える管が背中に入ってるって、リュウパパが言ってた。夜中うなされた時、リュウパパが、麻酔を追加してたし…」と、僕の手を握る。そっか。結構、痛みもあるはずなんだ。と思う。
「そっか。」と小声で言う。サッカーしばらくお預けか。と思ったら、急に涙が出た。僕は布団をかぶる。あやめは
「私達家族ががついてる。ずっと、一緒に頑張る。だから、泣かないで虎太郎。」と布団ごと僕を抱きしめる。
「泣いてねーよ…」と、鼻水を啜る。
「鼻水が、目から出てるだけだよ。馬鹿。」と強がったら、あやめはわかってると泣き声を出した。
「なんで、あやめまで泣くんだよ。あやめが泣いたら、今度は俺が慰めなきゃなんないだろ。」と、泣き笑いの顔を出して、あやめの髪を撫でた。あやめはわかってるとまた言って声を出して泣き続ける。
まったく、オンナってヤツは困ったヤツだ。

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