大きな河の流れるまちで〜番外編 虎太郎の逆襲〜
僕等は夜の羽田空港にいた。
花のマークが付いたラウンジで軽食を取ったり、大人達はビールを飲んだりして、リラックスしている。僕とあやめは昴君の宿題を片ずけている。いくらやっても終わらないんじゃないかと溜息が出るけれど、ホノルルから少し離れたビーチリゾートにあるいつものコンドミニアムに着いたら少しはのんびりしたいのだ。
リュウは白人男性に話しかけられて、驚いた声を出す。去年、機内で心臓の調子を悪くした本人らしい。ナナコ以外は英語をきちんと話す。(僕等も小さい頃から、英会話の家庭教師が付いていたので普通に話せる。ナナコも一応僕等と一緒に習っていたので、相手が言っていることは理解しているようだけど、自分から、会話することは無い。)話を聞いていると、きちんとお礼も言っていなかったからと言った彼は随分とリュウを探したらしかった。航空会社は情報を公開しなかったから、僕等、家族が泊まったホテルを探し出して、毎年、2週間宿泊していることを突き止めたらしい。そして、ここで、同じ便を予約して、ここに来た。という訳だ。Dr.リュウと同じ便なら、また、具合が悪くなっても大丈夫。とスミス氏は笑った。彼は、ファーストクラスに僕等も招待してくれようとしていたが、リュウは断ってしまった。(もったいない)彼はハワイで手広く事業をやっているらしい。ハワイで開業するなら、声をかけてくれと言って、去っていった。
リュウはやれやれと溜息をつき、オフモードに突入したようだ。ナナコを抱き寄せ、だらしなく寄りかかる。
「ナナコぉ、ハワイに住みたい?」と聞いている。安定した気候のハワイはナナコの体に良いことはわかっているのだ。ナナコは笑って、
「家族があの町にいるから、今住んでるところで良いかな。」という返事にリュウは、
「こいつらまだまだ手がかかりそうだしねぇ」とニッコリして、ナナコの頬に唇をつける。オフモードのリュウはナナコにべったりだ。
コンドミニアムに着くと、僕等を壮一郎や、桜子さんに任せ、そのまま、ナナコを抱え上げ、寝室に消えていくのが恒例になっている。子どもの前なんだから、少しは遠慮して欲しいもんだ。


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