大きな河の流れるまちで〜番外編 虎太郎の逆襲〜
僕にとって、あやめは何だろう?
そのまま、家に帰れずに、川沿いを自転車を押して歩ながら考える。
ずっと一緒に育ってきた兄弟のような存在。間違いなく家族なんだと思う。昔々は一緒に風呂にも入っていたし、抱き合って昼寝もした。親の影響か、キスも普通にしたし、結婚するって約束もしてた。大好きだって、ずっと一緒だって思っていたのに、
今は、あやめと、2週間もまともに口をきいていないし、さっきは慌てて逃げ出した。
あやめは、僕の態度に傷ついたかな。
僕は、どんどん、自分の道を決めて真っ直ぐにすすんでいくあやめが羨ましかったんだ。
僕の知らないうちに先にオトナになっていくあやめ。
僕は道に迷って、うろうろしてるただのガキだ。
今日、家に戻ったら、ゴメンってちゃんと言おう。あやめが医学部に入るのに賛成だって、家庭教師の永野はイケ好かないけど、頑張れってちゃんと言おう。


家に戻ると、ナナコは留守だった。お手伝いの八木さんがドアを開ける。八木さんが
「あやめさん、具合が悪いって言って、お家で休まれているので、ナナコ奥さんが、おかゆを持って東野家に行ってるんですよ。最近、お勉強が忙しいから、疲れたんでしょうかねえ…」と僕に言う。
あやめは翌週から、さらに勉強すると言って、僕と食事をする時間に尾崎家を訪ねなくなった。
あやめは僕との間の扉を閉めたのだ。
僕のゴメンはあやめに届くことはなくなった。
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