…だけど、どうしても
「どうして名乗ろうとしなかったんだろう。」
妙に、頑なに。
「アイスドールだからじゃないのか。小さい頃からそういう教育を受けてるとかさ。ほら、うかつに名乗って誘拐でもされたら困るだろ。」
高木の言う事はわかる。わかるが何か違和感を覚える。
「ま、そんなこた本人に訊けよ。再来週、会えるから。」
「は?」
「お前も出席しろ。」
高木が、書類の上に更に、一枚の小さな封筒を置く。
…招待状。
「面子的にほぼ確実に東倉花乃は来るはずだ。」
「高木…」
「使える犬だろ、俺。」
元々高木は、俺が無事社長の座に就いた暁には、右腕として暗躍して貰おうと考えてずっと側に置いている。
高木自身もそれを好んで了承し、その上で、今から必要な仕事や、役立ちそうな経験は積極的にしにいっている。探偵まがいの調べ物も、いつの間にか高木自身が習得した技術に違いなかった。
「感謝するよ。」
「高いぜ。」
「犬のくせに。」
お、調子戻ってきたな、と高木が昔と変わらない笑顔で言った。