…だけど、どうしても
「紫苑! 紫苑、久しぶりー!」
招待客層よりはずいぶん若い声が俺を呼んだと思ったら、腕に何かぶつかってきた。
「どうしたのー、嬉しい会えて!」
「…ミイナ。」
ここの主催者、財界ではかなりの権力を持つ家の娘だった。昔はよく遊んだ…というか…
腕にしがみついてあらさまに押し付けられるミイナのふくよかな胸の感触に俺は気づかないふりをした。これでも、くだらない嫉妬で近づいてくる輩を追っ払う魔除けくらいにはなるのだ。
「お父さん、どこかな。挨拶しないと。」
「いいよーそんなの、あたしから言っとく!」
「いや…」
早々に挨拶をしておいて、ゆっくり花乃を探したい。いや、俺はふと思いつく。もしかして、ミイナは花乃のことを知っているんじゃないのか?
「お前さ、友達多かったよな。もしかして…」
「えー、何?」
言葉を継ごうとして、俺は声を失った。
ざわめきが耳から遠くなる。グラスのぶつかる音。笑い声、かすかに揺れるシャンデリアのきらめく光、すれ違う人々の動きがスローモーションだ…
「いた…」
今日は、淡い紫色の裾の広がった、膝までの丈のドレスを着て。
広がった白い胸元にはダイヤモンドのネックレスが輝いている。
俺だけじゃない…多くの男が彼女を見ている。
清楚で…透明で清浄な光を纏っているような。
「紫苑?」
ミイナが不思議そうに俺を見上げているが俺はもう花乃に向かって歩きだしていた。