…だけど、どうしても
ひとまず花乃を応接室に通した。
「ごめんなさい。言ってくれればどこかお店で待ってるから。」
「いや、いい…まだあんまり体調良くないんだろ? もうすぐみんな食事に出るし、後で出前でも取ってここで食べよう。帰りは送るから。」
「え、そこまでしてくれなくて平気よ。すぐに終わるから、紫苑は後でどこかで食べて。食欲もあんまりないの。」
「食べなきゃ体力戻らないぞ。」
言いながら、とりあえず俺はテーブルを挟んで向かいに座った。
「で、どうした。話って?」
「…あのね。」
一瞬間を置いて息を吸うと、後は淀みなく最後まで穏やかに、花乃は言った。
「別れてって、言いに来たの。本当はもっと早く言うべきだった。ううん、本当は、始めちゃダメだったの、私みたいな人が、貴方みたいな素敵な人と。だけど私、貴方が追いかけてくれて、本当に嬉しくて。貴方と居た時間本当に幸せで、夢みたいだった。感謝してもしきれないわ。紫苑、今まで本当にありがとう。」
そして、深々と頭を下げた。
俺は、
俺は頭が真っ白に、なって。
それじゃあ、お仕事邪魔してごめんなさい、と花乃が立ち上がる。
身体が動かない。
俺が、花乃を、失う…?
ガラスのテーブルが呆然とした俺の顔を映している。
また、逃げるっていうのか。俺をこんなに、虜にしておいて。また、笑顔で。
なんて…なんて自然に、話すのだろう。こんな話を、苦しみなんかないみたいに、花乃は…
いや、違う、動け、追いかけろ。花乃が出て行ってしまう。
ーー行かせるな。
花乃が、もし…
花乃が、俺に対して嘘を吐くとしたら。無理をしているとしたら。
それは、驚くほど自然なはずだ。
だけど俺は見抜ける。
そうだろ?