理想の恋人って!?
「じゃ、決まりだな」

 チケット販売カウンターで映画のチケットを買った。ここももちろん割り勘で。

「ポップコーンでも買う?」

 指定されたスクリーンに向かいながら晃一が言った。

「そうだね。でも、さっきランチを食べたばっかりだから、一つを半分こしない?」
「了解。じゃ、先に席に座ってて」

 晃一がそう言って売店に向かってしまったので、私は一人でスクリーンに入った。階段を下りて、中程の列の端から二番目の椅子に腰を下ろす。ほどなくして晃一が、ポップコーンとジュースのカップを持って入ってきた。

「明梨はオレンジジュースでいいよな?」

 晃一がMサイズのカップを差し出してくれた。

「ありがとう。いくら?」

 晃一が私の右側に腰を下ろして言う。

「いいよ、このくらい。ジュースぐらいなら友達でも奢ったりするだろ?」
「まあ……そうだね」
「だから、今回は素直に甘えろ」

 なんだか偉そうな言いぐさだけど、偽りとはいえ一応デートなんだから、あんまり割り勘を主張しすぎても感じが悪いかもしれない。目が合った晃一がうなずくので、今回は好意を素直に受け取ることにした。

「ありがとう」
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