理想の恋人って!?
 ストローに口をつけて一口飲む。喉から体に染みわたっていく、ひんやりと心地良い甘酸っぱさに、思わず口元を緩めてしまう。

 もう一口味わっていると、晃一の声が聞こえてきた。

「ただのオレンジジュースなのに、明梨っていつもうまそうに飲むよな」
「いつも?」
「ああ。陽太たちとカラオケにいっても、最初はいつも百パーセントのオレンジジュースを頼んで、今みたいにうまそうに飲む」
「えー、そうだっけ?」

 あまり意識してなかったけど、言われてみればいつもオレンジジュースを最初に頼んでいる。驚いた顔をする私に、晃一が片方の口角だけ引き上げてニヤリとしてから言う。

「そりゃ、高校は違ったけど、私たち、いったい何年来の付き合いだと思ってるの? 俺は明梨のこと、ポニーテールのかわい~い小学生だったときから知ってるのに」

 どこかで聞いたしゃべり方に、私はじろりと晃一を見た。控え目なライトの下、彼の顔にいたずらっぽい笑みが浮かぶ。

「真似すんな」
「バレたか」
「バレいでか!」

 ツッコミを入れるべく、右側に座る晃一の腕を右手の甲で軽く叩いた。

「うっ、骨折したっ」

 晃一が大げさに左腕を押さえて言う。失礼なヤツだ。

「するか、アホ!」
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