理想の恋人って!?
 晃一は、フォワードとディフェンダーをつなぎながら攻撃と守備の両方にかかわるミッドフィルダーの中でも、最前方にいて攻撃にも積極的に参加している。攻撃的ミッドフィルダーというポジションで、自らもゴールを狙う。そのため、ドリブルやパスなどのテクニックだけでなく、相手守備陣からのプレッシャーにも耐えられるフィジカルの強さも必要だ。

 そんなポジションを任されている晃一が、昨日海で話してくれた言葉が蘇る。

『俺なんかまったくフツーだったんだよ』
『最初は負けないように努力したけど、俺なんかせいぜいベンチを温めるくらい。ベンチ入りできないこともあった』

 うちの大学は全国的に見るとけっしてサッカーの強豪校ではない。大学サッカーのトーナメントでも準々決勝進出が過去最高だ。

 スポーツの世界は本当に厳しいんだな、と思う。でも、そのなかで自分を見失わず、新しい夢を見つけた晃一。彼はピッチを駆け、大声で味方チームに指示を出し、絶妙のタイミングでゴール前に詰める。

「かっこいい……」

 どうして今まで観に来なかったんだろう。ピッチを駆け回る晃一は、信じられないくらいに凛々しくて、誰よりも輝いている。
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