理想の恋人って!?
「吉沢(よしざわ)くーん、がんばってー!」

 私の斜め前、ベンチで試合を見ているマネージャーの一人が、晃一に向かって声を張り上げた。彼女たちの横にはタオルやスポーツ飲料のボトルなどがたくさん置かれている。

 そのゆるふわパーマのポニーテールからピッチに視線を戻すと、相手チームがパスをつなぎながら攻め入っているところだった。そのパスの先を潰すように晃一が動く。

「やっぱり吉沢くん、足速いねぇ」

 別のマネージャーが言った。

「うん、吉沢くんが一番うまいしかっこいーなー」
「まーた、千春(ちはる)ってば。ほかの選手も応援してあげなよぉ」

 呆れたように言われて、千春と呼ばれた彼女の横顔が朱に染まった。チームカラーのえんじ色のポロシャツに白い短パン姿だけれど、ゆるふわなポニーテールがアンバランスでかわいらしい。

 けれど、彼女たちのことよりもすぐに展開の早い試合に私の目は釘付けになった。スポーツ好きな父の影響で、子どもの頃から私もいろいろなスポーツをテレビで、ライブで見てきた。野球にラグビー、アメフト、テニス、それにもちろんサッカーも。
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