汝は人狼なりや?(※修正中。順を追って公開していきます)
 死んだのは風子似の誰かなんだ。きっとそうだ。信じられない。──だからこそ、それをちゃんと確かめるためにも、病院に出向こう。


「待って!私も行くわ……!私も、行くから……」


 洋子さんは僕が行くことを知ったからか、慌ててそう言い放った。風子の死が真実にせよ嘘にせよ、病院へ行く以外の選択肢は、僕らにはなかったということだ。


 ──こうして僕たち3人は、すぐに支度を済ませ、臣さんが運転する車で風子が運び出されたという病院へと向かった。

 車内は、到着する始終、ずっと重苦しい空気が流れていて、そこから逃れるように窓の向こうの景色を眺めていた。臣さんは予めセットされていた音楽をすぐに消したし、洋子さんはずっと項垂れていた。

 病院に到着し、総合案内所で事情を説明すると、ひとりのナースに風子がいる霊安室まで案内された。

 部屋の中は仄暗く、ひんやりと冷たい。場所がそうさせるのか、そういう温度に設定されているのかは分からないけれど……。

 真っ白いベッドが1つ、部屋の真ん中に置かれていた。その上に〝それ〟が横たわっていて、顔を隠すための白い布が1枚、かけられている。

 ナースに許可をもらった臣さんが、ゆっくりと白い布をめくっていくと、真っ白な顔をした人の顔があらわになる。

 ふわふわとした茶色い髪、閉じられたまぶた、筋の通った鼻、ふっくらとした唇……──見間違えるはずがない、それは、どう見たって長年そばで見続けてきた、見慣れた風子の顔だった。

 テレビで〝鋭利なナイフのようなものから人間ではつけられない傷痕が体中にある〟って報道されていたけれど、顔は擦り傷や小さな切り傷くらいで、思っていたよりも少ないことが何よりの救い……なのかな。
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