汝は人狼なりや?(※修正中。順を追って公開していきます)
 そんな彼女は、自分の席について読書をしていている途中だったらしく、本を片手に狼谷くんたちを鋭い目付きで睨んでいる。


「あ? んだよ、寺山。 今すぐここでお前を組み敷いてやってもいいんだぞ?」


 怯んだり、屈するどころか、食い付いてきた狼谷くんのニヒルな笑みからは、余裕しか感じられない。でもそこで引き下がる寺山さんでもなかった。


「やれば? そしたら蹴り上げて、ぶら下がっているそのお粗末なモノを再起不能にしてやるから」


 ズバリ、と、彼女は臆することなく言い放つ。……股を蹴り上げた時の痛みは、想像したくもないけれど。でも、ズバリと言い放つ彼女が、かっこよく見えた。


「ひぇー、おっかね~」


 けらけらと笑う狼谷くんを見る限り、本気で怖がっていない……むしろ、〝やれるものならやってみろ〟と言っているようにも見えた。つまるところ、寺山さんを挑発してからかっているんだ。

 やっぱり、狼谷くんは性格が悪いのだとしみじみと思った。思い知らされた。


「鞠歌ちゃんはすごいね」

「あたしたちには無理だよー、狼谷にハッキリとモノを言うの」

「ホント、ホント。その秘訣を教えてほしいよ」


 狼谷くんと寺山さんのやり取りを聞いていたのであろうクラスメートの女子生徒たちが、寺山さんを囲むようにして、周りに集まってきた。

 三つ編みのおさげに丸眼鏡が特徴的な、大人しくて人見知りの激しい明智 夕里(あけち ゆうり)さん。よく泣いているところを見るかも。

 茶髪のハーフアップの髪型で、大上さんの次くらいに明るい性格の如月 沙彩(きさらぎ さあや)さん。流行に敏感で、女性向けのオシャレ雑誌を持ってきては他の女子生徒にすすめていたりする。
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