汝は人狼なりや?(※修正中。順を追って公開していきます)
「あのなぁ、狼谷。そういうの、今はやめてほしいんだけど」
なるべく狼谷くんの機嫌を損ねないようにと、思い切り下手に出るような言い方で、やめるように言う。
「あー? お前が先に言い出したんだろうが、上杉」
「漢字も意味も違う!」
「想像した? なあなあ、想像した? セ・イ・リ」
けれど、狼谷くんはいっこうにやめる気配がなく、気持ちの悪い笑みを浮かべて上杉くんに絡んでいく。
このままじゃ空気の悪いままだし、何より女子生徒たちの気持ちを考えると……いたたまれない。かといって、男の僕が何か口を挟む勇気はないし、僕が挟んだところで女子生徒の気持ちが良くなるのかといったら……分からない。
自分の無力さを恨むように、自らの唇をぎゅっと噛んでいると、腹を抱えて笑う狼谷くんの方へ、誰かがすっと近付いてくのが視界の隅で見えた。
ちらりと視線を向けると、寺山さんの姿が見える。ずんずんと迷うことなく狼谷くんの方へと歩き、やがて、目の前で足を止めた。
それに気が付いた狼谷くんは、不審そうに目を細める。
「んだよ? 寺や──」
その、刹那だった。狼谷くんが話している途中、無理やり話を終わらせるかのように、パシンッ……と、乾いた音が部屋をこだましたのは。
──叩いた、んだ。
寺山さんが狼谷くんの頬を、叩いたんだ。
その音は軽く、決して痛くはないだろう。しかし、〝あの〟狼谷くんに手をあげたという事実に、辺りは凍り付いたかのようにシンと静まり返る。
「……あ?」
叩かれた本人は、自分に何が起きたのか理解できていないようで、呆然とする。
なるべく狼谷くんの機嫌を損ねないようにと、思い切り下手に出るような言い方で、やめるように言う。
「あー? お前が先に言い出したんだろうが、上杉」
「漢字も意味も違う!」
「想像した? なあなあ、想像した? セ・イ・リ」
けれど、狼谷くんはいっこうにやめる気配がなく、気持ちの悪い笑みを浮かべて上杉くんに絡んでいく。
このままじゃ空気の悪いままだし、何より女子生徒たちの気持ちを考えると……いたたまれない。かといって、男の僕が何か口を挟む勇気はないし、僕が挟んだところで女子生徒の気持ちが良くなるのかといったら……分からない。
自分の無力さを恨むように、自らの唇をぎゅっと噛んでいると、腹を抱えて笑う狼谷くんの方へ、誰かがすっと近付いてくのが視界の隅で見えた。
ちらりと視線を向けると、寺山さんの姿が見える。ずんずんと迷うことなく狼谷くんの方へと歩き、やがて、目の前で足を止めた。
それに気が付いた狼谷くんは、不審そうに目を細める。
「んだよ? 寺や──」
その、刹那だった。狼谷くんが話している途中、無理やり話を終わらせるかのように、パシンッ……と、乾いた音が部屋をこだましたのは。
──叩いた、んだ。
寺山さんが狼谷くんの頬を、叩いたんだ。
その音は軽く、決して痛くはないだろう。しかし、〝あの〟狼谷くんに手をあげたという事実に、辺りは凍り付いたかのようにシンと静まり返る。
「……あ?」
叩かれた本人は、自分に何が起きたのか理解できていないようで、呆然とする。