嘘つきシンデレラガールと二人の偽王子!?

事務の仕事は、本当に裏方ばかりで他の部署の雑用ばかりだった。

新入社員の歓迎会の殆どを塚本さんが指揮していたし、配られる小物やバッジなど、会場に展示する今までの作品の資料なども全部。

今週の土曜にあるらしいけど、間に合うのかと不思議なくらいだ。

お陰で、塚本さんと社内をバタバタ走りまわっている事が多いせいかあの二人に出くわしていない。

何故私のハンカチとリップの事を知っているのか分からないけれど、聞きたいようで――私とお婆ちゃんだけの約束が周りにばれてしまうような気がして怖くて逃げた。


お婆ちゃんが昔、デザイナーだったことは知っている。
目の病気で色彩が分からなくなって悲しんでいたお婆ちゃんと私は秘密の約束をしたことは――ばれたくない。

駆けまわり、金曜日は会場の整備でホテルへ向かった。

前日は使わないから好きに使っていい良いという御好意で、用意をさせて貰った。

テーブルだの椅子だのは、ホテルの人が手伝ってくれたから早く会場は出来上がった。


そして、帰って来たら私の机の上に、明日の招待状が置かれていたけれど、塚本さんに見つかる前にそれを引き出しへ隠す。

私には招待状が届かなかった。

今さら嘘の招待状は要らない。部署での歓迎会だけでいいから。

最初から自分の価値なんてちゃんと分かっているつもりだ。

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