晴れ、のち晴れ

「幕間、問七の答えおせーて」

後ろの席の生徒に突かれて、葵は振り返った。その耳にどこからともなく囁きが飛び込んでくる。

「カンニングだってよ」

「よりによって、うるさい桂川に見つかるなんて、悲惨だよな」

噂されている本人を葵は見る。下を向いて、小さく椅子に座っていた。

名前を知らない生徒だ。

と、いうより葵は元々クラスメイトの名前を覚えるという感覚が薄く、必要な何人かしか、毎年覚えなかった。

「可哀相だよなー」

答えを聞いてきた後ろの生徒も、同情するように言った。

葵は頷きつつ、頭は既に次の世界史に切り替わっている。
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