晴れ、のち晴れ
「俺、ちょっと出掛けてくる」
葵は突然そういうと、紙袋を持って立ち上がった。
「いってらっしゃい、気をつけて」
珍しく夢香は素直にそう言って葵の後ろ姿に手を振った。あたしもいってらっしゃいと言うと、ゆっくりしていけよという言葉が返ってくる。
ドアの閉まる音を聞いた夢香は、ティーカップとクッキーの乗ったトレイを運んでくると、テーブルの上に置いた。
「頂き物で申し訳ないけど、どうぞ」
「あ、ありがと…」
高そうなティーカップにあたしは緊張する。落として割ったら、きっと弁償できない。
「あのね、梨羽さん」
お湯を注ぎながら、夢香が静かに話し出す。
「私、昔お兄様が大嫌いだったの」